たよりない眠気

上京して7回目の梅雨がきた。でも未だにこの地域の季節の変わり目がよくわからない。梅雨入りしたかと思えば気持ちいいほどの青空をみせるし、かと思えばまたしとしとと雨が降る。荷物が多いのは苦手だけど、小雨で濡れた髪の毛があそんでしまうのも気が滅…

猫のひげを3本拾った

気づけば三月、東京はもうすぐ春。 いちばんすきな響きだけど、いちばんこころがざわつく時期。 当たり前だと思っていたことはいつの間にかなくなっていて、たくさんのひとにはじめましての挨拶をしなきゃいけなくて、暖かい陽光が差し込んだと思いきやつめ…

目を瞑るとすぐに火花が弾けた

つい先日、ピアスを開けた。 それはなんてことない日に、なんとなく思いついただけのことだった。いまさらだなんて考えがよぎることもなく、誕生日がきたら開けちゃおう、と思った。わたしが28年間守ってきたモットーは、オーガンジーがひらりと舞うくらい…

グラタン皿のある家

ここ数日、雨がつづいている。以前ほど、天気の乱れをなぞるようにこころまで乱れることはなくなったけど、まだなんとなく足取りが重くなる。水溜りを避けるように歩かされている感覚や、歩き方に癖があるせいですぐに湿ってしまう靴下のかかとに気を取られ…

灰色のシミ

すべての仕事を家でするようになって、ほとんど化粧をしなくなった。家ではだいたい部屋着で過ごしているし、仕事中は髪の毛もひっつめてメガネのまま。隣駅に行く時だって、吉祥寺にほんのちょっとだけ用事を足しに行く時だって、すっぴんで出かけたりする…

パターソン

洗いたてのタオルケットが好きだ。素足で冷たいシーツをなぞる時の心許ない心地よさを、ほつれた糸のせいでざらついた布がうまく絡めとってくれる。タオルケットは、使い古してぼろぼろであればあるほどいい。どんなにおひさまの香りを纏っても、所詮は繊維…

とがる

アラームが鳴る。わたしは手を伸ばして携帯をああだこうだと握りこみ、適当なボタンを押したらしい。けれどそんなの記憶にない。徹夜明けの恋人が、また布団にもぐろうとするわたしを引き摺り出そうとしきりに声をかける。いつもは隣でぐうぐういびきをかい…

誕生日のこと

暑さがすこしずつ和らいで、もうすこしだけひとに優しくなれそうなくらい余裕をふくんだ風の吹く夜、わたしは夜行バスの中で28歳になった。じぶんの誕生日に、安くない出費をしながらもどうしてもすきなひとに会いたくて旅に出るだなんて、はたからみたらす…

休日

ひさしぶりに何もない日だった。だれかと会う予定も、電話の約束も、何もない。起きる時間も気にしなくていいし、誰の顔色も汲み取らなくていいし、食べるものも考えなくていい。本当に、わたしのすきにしていい日だった。やりたいこととか行きたいところと…

キューちゃんの展示をみてきた。彼女のつくるものに触れると、いつも心がぴりぴりする。きっと彼女の繊細さが、みてるひとの内側に入り込んではそうさせているのだと思っている。以下、展示の感想と、彼女に宛てた単なるファンレターです。彼女の第一印象を…

蕾の積み木

つい先日、職場の研修修了式がありました。上京してからの日々は早いもので、青森の田舎娘はもう若手職員から中堅職員になってしまいます。この4年間、だいぶ駆け抜けたなあ、と思いながらこれまでの研修風景をスライドショーでみてたんですけど、最後に1…

アシカセタウン

あたらしい家での生活がはじまった。朝起きて眺める色がわたしのすきな白色であるだけで、なにか贅沢をしている気持ちになる。出窓から差す朝日も、すきな人の寝顔も、すこし肌寒く鎮まった空気のなか点ける煙草も、すこしずつわたしの日常になっている。や…

シンセイカツブルー

最近はなかなかに荒れた生活をしている。ただの多忙、なだけなんだけど、充足感がすこしずつ削りとられていってしまってる現状はどうながめてもわたしだけじゃ力不足で。仕事をどんなにがんばっても、すり減った靴底では生きた心地がしない。せっかく患者さ…

昇華する日々

ここ数日、あたらしい住処に必要なもの、ここでさよならするべきもの、を取りわける作業をしている。きっともう使わないと思うなら、持っていても仕方がないし。なくして思い出せなくなるくらいなら、きっとわたしの生活においてもその程度の容量しか占めて…

しろいひかり

新年をむかえて、街のにがてな雰囲気をなんとなくかわしながら過ごしていたらもう、一週間がすぎていた。つい先日、入居希望の物件にキャンセルがでたので、電車にとびのってすぐに契約した。慎重なわたしの性格からは考えられないくらい、ながれに身を任せ…

ブックエンド

わたしは年末がにがてだ。みんながほのぼのと年越し準備をしている間、ひとり閉塞感と孤独感でいっぱいになっている。理由はよくわからない。比べるほどしあわせに過ごした年末の記憶もないけど、浮かれた街中に対してあまのじゃくでいたいわけでもない。自…

ハンドメイドホーム

ね、生温い日々がゆるりとつづいた時、こころは鋭さをなくす?こころが鋭くないと、ひとに刺さるものはつくれない?ふとした時に訪れるあの、ひとりきりになりたい感覚。つぎからつぎへと溢れでて、こぼさないように追いかけこころが跳ねては、勿体無くて結…